My RED WING Story Vol.02 / 渡辺佳代子(otona MUSE)
女性が欲しいと思う純粋なブーツ。
レッドウィングがいま、愛される理由
レッドウィングがいま、愛される理由
アメリカンワークブーツの定番として確固たる地位を築き上げる〈レッドウィング(RED WING)〉。このブランドのアイテムを日本のトップクリエイターたちはどんな視点で眺め、どんな価値を見いだしているのか?さまざまな角度から疑問を投げかけ、彼らのアイデアを探ります。
2回目に登場するのは、自立した女性のためのファッション、ビューティ、カルチャーなど、さまざまな情報を発信する雑誌『otona MUSE』の編集長を務める渡辺佳代子さん。誌面ではいちはやく〈レッドウィング〉を取り上げ、読者から多くの反響を獲得してきました。いま、どうして女性の足元にこのブランドが合うのか?渡辺さんの視点から眺める〈レッドウィング〉の魅力について語ってもらいました。
好きなものがマニッシュな方向に変わってきた。
― 渡辺さんが雑誌の編集の仕事をはじめたきっかけを教えてください。
渡辺:子供の頃から雑誌が好きで、それをつくる人になりたかったというすごく単純な動機があったんです。小学校高学年くらいから雑誌をいろいろと買いはじめて、中学生になると好きな写真を自分で切り貼りして、スクラップブックをつくるようになったんです。それが編集っていう仕事につながるとは当時は全く思ってなかったんですけど、いま思えばそのときから同じようなことをしていましたね。
― 編集という仕事は、物事を観察して、情報を集めて、それを整理して、最後に誌面に落とし込むという作業になりますよね。それが好きだったんですか?
渡辺:私はむかしから可愛い女の子が好きで。可愛い女の子の写真を雑誌から切り取って、それをノートに貼って自分だけのものにして眺めていたんです(笑)。だから、どちらかというと収集している感覚なんですよね。
― 収集の延長で、いまは好きなものを自分でつくるようになったということですか?
渡辺:そうですね。むかしは雑誌の写真を切り取って、コラージュして、自分だけのスクラップブックをつくっていましたけど、いまはそれをするために企画をゼロから考えて、撮りおろして、その写真を誌面に落とし込んでいるという感じ。なので、結構自己満だったりもして(笑)。
― 渡辺さんが編集長を務める『otona MUSE』は、どういった雑誌なのか教えてください。
渡辺:私はもともと、『otona MUSE』をはじめる前に『sweet』っていう雑誌を1999年から2020年までつくっていたんです。その名の通り、甘くて可愛いファッションが好きな女の子に向けてつくってきたんですけど、長く続けるうちにスタッフもモデルも読者もみんな大人になってきて。それに伴って好きなものもシンプルとか、ハンサムとか、マニッシュな方向に変わってきちゃったんです。
― そこで自分たちがつくる雑誌も舵を切りなおしたわけですね。
渡辺:そうですね。一緒にやってきたスタッフたちと、大人になった自分たちに合った女性像やスタイルを改めて提案する雑誌をつくろうと思って。
自分たちが魅力的だと思う“女性像”を打ち出している。
― 渡辺さんは先ほど「可愛い女の子が好き」と仰っていましたが、ファッションもお好きなんですか?
渡辺:そこが難しいところで、ファッション自体がものすごく好きというよりは、絵づくりをする上でのひとつの要素として、ファッションが大事というほうが近いかもしれないです。ひとつの世界観を表現するために、それに合った服をモデルに着てもらって、メイクをして、そしてシチュエーションも突き詰めて。そういうのを考えるのが好きなのかも。
― 読者の方々は、提案されるスタイルやファッションがすごく気になっていると思うんです。世の中のファッションをどう見て、それをどう雑誌に反映させているんですか?
渡辺:ここ10年くらい、トレンドがあまりなくなっているなって感じますね。2000年代は展示会に行ってメモを取って、こういうのが流行りそうだなっていうのを自分なりにキャッチして、それを読者に合わせて提案していたけど、そういうことも少なくなってきましたね。だけど、毎年手持ちの服だけを大事に着続けるのは、やっぱり味気なくて。そこをうまい具合にちょっとずつブラッシュアップしながら提案したいですよね。そんなことを思いながら誌面をつくっています。
― いまはカテゴライズがすごく難しいというか、ひとつのスタイルに固執するというよりは、いろんなスタイルを楽しむ人が増えたような印象です。
渡辺:『sweet』も『otona MUSE』も、いまは人物によるところがすごく大きくて。“ファッション”っていう単一的な視点ではなくて、魅力的だと思う“女性像”を打ち出しているから、もっと総合的なんです。だからトレンドがなくて困ったなぁという感じでもないんですよね。
〈レッドウィング〉は『otona MUSE』の読者が欲しいボリューム感。
― 女性のスタイルの話をすると、ここ10年くらいで女性のシューズの選択肢がものすごく広がったように思うのですが、渡辺さんはどう感じていますか?
渡辺:ものすごく変化があったと思います。むかしはあんなにヒールの特集をしていたのに、最近みんなヒールを履かなくなりましたよね。
― スポーティなスタイルが流行って、スニーカーを履く女性がすごく増えました。
渡辺:ここ2、3年はとくに足元のボリュームが戻ってきている感じがします。『otona MUSE』の読者って、若いころ厚底ブーツを履いていた世代なんですよ。足元を重めにして全体のバランスを取るっていうアプローチが染み付いているから、ソールが薄かったりすると、ちょっと物足りなかったり、頼りなく感じるのかもしれない。
― そこで〈レッドウィング〉が重宝しますよね。
渡辺:そうなんです! それを言いたかったんです(笑)。〈レッドウィング〉の靴は、『otona MUSE』の読者世代が欲しいって思えるボリューム感で、バランスがすごく合っているんだと思うんです。
― 〈レッドウィング〉はヘビーデューティなイメージがあって、それが見た目にも現れています。そうしたデザインは女性から見て、いかがですか?
渡辺:本質をないがしろにした、ただなぞらえただけの“それっぽいもの”って、うちの読者は手に取らないんです。
― いわゆる「レッドウィング“風”」のものでは満足できないと。
渡辺:そうですね。新しい靴を買うなら、しっかりと長く履けるものを選ぼうという本物志向の人たちが多いんです。だから〈レッドウィング〉のブーツって、ウィメンズのモデルでも見た目が変にフェミニンになっていなくていい。それでいてメンズモデルと比べてレザーが薄くなっていたり、軽量化されていたり、女性が履きやすいようにしっかりとアレンジが加えられていて。いくら見た目がかっこいいからって、やっぱり履きづらいと辛いじゃないですか。
― 渡辺さんも実際に「Iron Ranger」を履かれているそうですね。
渡辺:靴のために服を買おうって思いましたね(笑)。普段はデニムとかチノパンを穿くことが多いんですけど、それに「Iron Ranger」を合わせちゃうと、90年代の人になっちゃうんですよ。それをいまの若い子たちがすると可愛いんだけど、その時代を通った私なんかがしちゃうと急に古臭くなってしまう。だから、スカートとかワンピースを合わせるのがいいのかなって。
― 『otona MUSE』 でも、〈レッドウィング〉にワンピースを合わせるスタイリング提案をされていましたよね。
渡辺:そうなんです。メンズの服を着る特集号でそうした提案をしたんですけど、その号の好きなコーデのランキングで、見事に1位を獲得したのが〈レッドウィング〉を使ったスタイリングだったんです。
― ワークブーツとワンピースの合わせは、一見すると相反するアイテムに見えますが、お互いの引き立て役になっているわけですね。
渡辺:そう思います。それと、足元にボリュームがあるとバランスがよくなるというか、スタイルがよく見えるんですよね。私はバレエシューズが好きなんですけど、ここ1年くらい履いてなくて。暖かくなってきたからまた履こうかなと思って引っ張り出してみたんですけど、足元がすっごい軽くて、ちょっと心もとない感じになっちゃったんですよ。
― 〈レッドウィング〉だと安心感がある。
渡辺:めちゃくちゃ安心しますね。大きな鏡で遠目で全身を見たときに、足元がしっかりしているといい感じに見える気がして。それにソールの厚みのぶん脚も長く見えますし(笑)。私は痩せ型だから、足元がちょっと重たいくらいのほうが全体のバランスが整うんです。
〈レッドウィング〉のお店が好き。
― 今日は「Postman Oxford」を履かれていますね。
渡辺:これ、めっちゃかわいいですよね。コーディネートルームで一目見たときから「こんなかわいいモデルがあるんだ!」ってすごく盛り上がったんです。欲を言えば、このシルエットでローファーもつくってほしいくらい(笑)。それくらい形がいいし、履きやすいですね。
― 先ほど〈レッドウィング〉のスタイリングがランキングで1位を獲得したと話していましたが、どうしていま、このブランドが女性に重宝されるのだと思いますか?
渡辺:〈レッドウィング〉の存在をみんな思い出したのが大きいのではないでしょうか。手持ちのアイテムとは違った方向性の靴だから、新鮮だったんですよ。それにつくりもすごくちゃんとしているし。新しい靴を買おうと思ったときに〈レッドウィング〉が選択肢の上位に浮上したんだと思います。
― 90年代から00年代のはじまりにかけて、女性で〈レッドウィング〉を履いている人は多かったんですか?
渡辺:多かったですよ。わたし自身も〈レッドウィング〉ではないけれど、このスタイルの靴を履いていました。ボタンダウンのシャツに、チノクロスの短パンを穿いて、足元はショートブーツで。
― 当時は雑誌の影響力が強かったと思うんですが、そうしたスタイルを提唱していたんですか?
渡辺:『Olive』とか『mc Sister』ですね。私たちにとっては教科書みたいな雑誌で、いわゆる定番を教えてもらいました。ボーダーのカットソーはこれ、ローファーを履くならこれ、みたいな感じで。
― 『otona MUSE』の読者層に、当時その雑誌を読んでいた人たちもいるのでしょうか?
渡辺:どうでしょう。私自身は『otona MUSE』の読者層よりもちょっと上の世代だから、重ならないかもですね。ただ、『otona MUSE』に出てくれているモデルやスタイリストは重なるかもしれません。彼女たちもリアルタイムを経験していて、それで懐かしくなったのも大きいですね。
― その熱量をもって誌面で提案されているわけですね。
渡辺:20年以上経って、改めていまとても新鮮で。当時はショーツとか、ミニスカートを穿いて脚を出して、クシュクシュっとしたソックスと一緒に履いてましたけど、先ほど話したようにいまはワンピースやスカート、それにトラックパンツとか、スラックスに合わせる提案をしたいですね。
― それだけ多用的な着こなしに合うということですよね。
渡辺:そうですね、本当に魅力的なシューズだと思います。
― 最後に、渡辺さんが今後〈レッドウィング〉に期待することはありますか?
渡辺:変わらずに、いまのままでいてほしいですね。あと、私は〈レッドウィング〉のお店が好きなんですよ。スタッフの方々は知識がすごく豊富だし、似合うものを薦めてくれるし、行くと楽しいなって思うんです。ネットでの買い物はラクだけど、お店に行くと、買う予定じゃなかったものを買っちゃうって良さがあるじゃないですか。
― あるあるですね(笑)。
渡辺:私はそういった体験がすごく好きなので、それができる場所として、変わらずにいいお店であって欲しいと思います。クローゼットに残るものって、じつはお店で買ったものだったりするんですよね。ネットではいくらでもそこそこの値段で似たものを探すことができるけど、お店だと本当に欲しいものだったら高くても買っちゃおうって思えるし、結局それが一番いい買い物だったりする。だからお店の存在ってやっぱりすごく大きいなって思っていて。
― 体験があることによって、自分の中でストーリーが生まれますよね。
渡辺:そうですね。足のサイズを測ってもらったりとか、すごい勢いで靴紐を通してくれたりとか(笑)。そういうのがなんだか楽しいんですよ。
Text : Yuichiro Tsuji
Produce : Takahiro Higashiyama