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2024/12/05

WILL YOUR WINGS Vol.3 〜代表 小林由生から娘へ、そしてRED WINGと関わる皆様へ〜

それぞれの“WILL YOUR WINGS” Vol.3
代表 小林由生から娘へ、そしてRED WINGと関わる皆様へ


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現状を打開し、自分らしく生きることに挑むすべての人を称賛する取り組み「OUT OF FASHION」。

その枠組の中で、この10月から「WILL YOUR WINGS」が始動。
耐久性に優れ修理できるRED WINGのブーツだからこそ可能な、 親から子、師匠から弟子、友人から友人など、次世代に受け継いでいく取り組みである。
単純に“モノ(=RED WING)”を受け継ぐだけではなく、その人の“想い”を受け継いでいくことが本キャンペーンの大きなテーマ。

最終回を飾る今回は、WILL YOUR WINGSのキャンペーンムービーにも出演した、レッドウィング・ジャパン代表、小林由生に話を聞いた。




まず最初に、今回「WILL YOUR WINGS」のキャンペーンが立ち上がり、青山店をはじめとして、様々なところでイベントを実施したり、webサイト上で店舗のスタッフの記事なども公開されました。現場での反響や、記事を読んでみての感想をお聞かせください。

元々このキャンペーンは、人と人の繋がりや、人の深い部分の価値観を見つめ直すことができる、特定の誰かではない、誰にとっても意味のあるキャンペーンなんじゃないかと考えていました。実際に実施してみたところ、予想以上に多くのお客様や弊社の社員など、自分の大切な人からどの様な影響を受けてきたかを考え、そのことに感動したり、家族の仲が一層深まったりと、人と人同士の繋がりを強めるきっかけになったと思います。


今回「WILL YOUR WINGS」のキャンペーンの立ち上げる際に、由生さん自身どのような気持ちでこのキャンペーンをスタートさせたいと思いましたか?

このキャンペーンは1年程度前からアメリカのマーケティングチームで実施が決まっていました。親から子、先輩から後輩、友人から友人へなど、人から人へ想いを受け継いでいくテーマを聞き、私自身も非常に素敵な取り組みだと感じていました。



キャンペーンで起用するモデルも世界中で体現する方を見つけることに苦戦を強いられたとお聞きしました。

そうなんです。母から娘へというパターンで体現している方々を見つけるのが非常に難航している中で、私と娘の詩乃に白羽の矢が立ったんです。
自分がキャンペーンのモデルになるとは考えていなかったので、驚きましたが、私自身は嬉しかったです。ただ娘の詩乃は目立つことを好むタイプではないので最初に話した時は少し嫌がっていました。笑
グローバルチームで企画しているキャンペーンであることや、撮影でアメリカに行けるかもしれないといったことを説明し、詩乃も異文化や新しい世界を見ることが好きな子なので、「じゃあ行ってみたい。」と承諾をもらいました。笑



単純に“モノ(=RED WING)”を受け継ぐだけではなく、その人の“想い”を受け継いでいくことが本キャンペーンのテーマと理解しています。由生さんも、今までのキャリアや人生の中でたくさんの“想い”を様々な人から受け継いでいると思いますが、印象的なエピソードはありますか?

一言でまとめるのはすごく難しいですね。色んな想いを受け継いできたと思っていますが、そのどれにも共通しているのは、「自由に生きて良いんだよ」「ありのままの自分でいて良いんだよ」ということです。
私の名前の漢字は「由生」と書くのですが、この名前には「自由に生きる」という親からの想いが込められているんです。私の世代で、こういった名前は珍しかったと思います。



学生の頃の私は集団生活に馴染めず、学校にちゃんと行けなかったりしていた時期もあったんです。ただ、アルバイトなど、目的が明確にあることに対しては真面目に取り組める子供でした。目的が曖昧で全員で取り組まないといけないことが、すごく苦痛で、出来なかったんです。社会性がないわけではないことはアルバイトが出来ていたので分かっていたのですが、学校生活においては、ちゃんとやりたいと思っていても出来ないことが多すぎて、「自分は駄目だ」と思い込んでしまい、コンプレックスや劣等感を抱えていました。
そんな中、学生の頃にアメリカで5年間程度留学していたことが今の私に通じる、非常に価値のある経験になりました。日本よりも柔軟で自由で、誰に対しても寛容的。自分自身がのびのびと出来る場所がアメリカでした。アメリカで出逢った多くの人や体験のひとつひとつが、「ありのままの自分でいて良いんだよ」と私の背中を押してくれました。


キャンペーンの映像の中で、詩乃さんに恐れずに、「挑戦すること」や「ありのままでいること」を伝えていきたいと仰っていましたが、由生さん自身にとっても大切なメッセージなのですね。

そうなんです、もはや自分のテーマとも言えますね。
すごく大切なことであることは分かっていても、簡単なことではないなと日々感じています。なので、娘に伝えると同時に、日頃から自分が自分に言い聞かせています。
私の中で「ありのままでいること」の定義は、何か嫌なことがあった時、それをすぐに表現するとか、やりたくないことはやらないということではないんです。自分が一番自分らしく、生き生きとしている状態が、ありのままでいることだと考えています。
「ありのままでいること」は解釈を間違えるとワガママになってしまいますよね。一番近くにいる大切な娘に対しても、自分自身に言い聞かせる様に、そのことを伝えたいんです。
娘は本来目立つことがあまり好きではないタイプなので、今回キャンペーン映像に参加することも渋々承諾してくれたので、映像が完成した時も自分から見たいといったリアクションではなかったのですが、実際に映像を見た時に、感じるものはあった様で、「うまくまとまってるね。」と言葉は少ないですが言ってくれました。7時から22時までと1日かけて撮影する関係者全員にとって過酷な現場ではあったのですが、その1日かけて撮影した内容が1分間に凝縮されていて、そのエッセンスを感じたからこそそう言ったのかなと考えています。



今回のキャンペーンの中で、由生さんは愛娘の詩乃さんへ、想いを引き継いでいく様子がクリエイティブに落とし込まれていました。一方で、ブーツを受け継ぐことはできないですが、由生さんが店舗や様々なイベントでお会いする方々に、たくさんの“想い”を受け継いでいる気がしています。一人の企業の代表という枠組みを超え、自分の家族に伝えているかのような、愛情を感じることがあるのですが、その原動力はどこからきているのでしょうか?

私が皆様にお伝えしたいRED WINGの魅力や、日々自分が感じていることを、ありのままにお話をしているのだけなので、そう感じてもらえていたとしたらすごく嬉しいです。

先ほども話した学生時代に5年間アメリカへ留学していた経験や、アメリカに本社を持つ会社の社員として20年程度働いていることが理由かもしれません。
今思えば、代表になる前は、アメリカ本社と日本支社の橋渡しのような役割を担っていました。アメリカ本社に対しては、日本支社の考えだけでなく日本の文化や仕組みを説明し、日本に合わせたシステムを作ってもらったり、日本支社に対しては、本社側の想いを間にはいる形で伝えていました。
そういったコミュニケーションの隙間を、自分という存在によって、繋げていこうと動いていたんです。
「橋渡しをする」という役割が自分にとって嬉しいことなんですよね。代表の立場になったからこそ、これまでは社内のみに伝えていたことを、もっと様々なお客様などに対して伝えていきたいと思い、実際行動に移しています。



人生の価値観が変わる瞬間は、何か大きいインパクトがないといけないって思っている人がたくさんいると思っているのですが、実はそうではなく、ちょっとしたことに目を向けて、一つ一つの変化だったり、個性の違いを感じたりすることで、人生がどんどん豊かになりますよね。もちろん簡単なことばかりではないですが…

異なる価値観に触れ、認めるということが大切だと気づきました。
私の場合はアメリカに留学したことがもちろん一つのきっかけではありましたが、大切なのは、大変な時にでもどの様に、自分自身に向き合えるかが重要だと思います。自分自身に向き合うと、自分自身の固定概念が崩れる瞬間や、小さなことでも様々な変化に気づけるようになると思うんです。
日本に住んでいると、皆同じであった方が良いという価値観があり、少し変わった人に対して違和感を覚えてしまったりすると思うのですが、海外に行くと、そもそも人種が違うので価値観が違う前提があるので、違いに対してポジティブでいることができるんです。違いに対してポジティブでいることで、自分の中にあった固定概念が崩れていくと思うんです。
私はこの仕事を通じて、様々な人の固定概念を壊したいと思っているんです。私達RED WINGとしては、「ボーダレス」という言葉をキーワードとして使っているのですが、その言葉にも、固定概念をなくし、様々な良いと思った価値観を取り入れるという想いが入っています。



由生さんの考え方はYouTubeやイベントなどで聞いていると、順風満帆なキャリアを想像してしまう人もいると思うのですが、決してそんなわけでもないというのが意外でした。

そうなんです。昔の同級生たちが私の今の立場や発信を見たり聞いたりしたらびっくりすると思います(笑)
でもそんな私だからこそ、キャンペーンやイベントの度に、お客様の人生がより素敵なものになってほしいと、本気で思っているんです。私自身がRED WINGと出会って人生が変わったように、お客様にも人生の可能性を広げるというと少し大げさですが、そんな意識を常に持って発信する様にしています。



一歩踏み出すこと、言葉にすると簡単そうに聞こえますが、すごく勇気のいることですよね。

自信がなくてもやってみたら出来ることってたくさんあると思うんですよね。私は、様々な人がそういったことに挑戦するスイッチを押したいんです。
私がこれまでアメリカだけではなく仕事で世界中を回らせて頂いた中でも、そんなことの連続だったんです。「不安だな」「大丈夫かな?」ほとんどの挑戦にそんな感情がありました。でも、その時々で自分の周りにいる家族や社員が背中を押してくれました。だからこそ、そういった経験を通じて得た、ポジティブになるための要素や欠片などを、様々な方に共有していきたいなと思っています。


ここまでもたくさんお話頂いたように、今回のキャンペーンは“想い”にフォーカスしていますが、このキャンペーンは堅牢につくられ、耐久性に優れたRED WINGだからこそ成立するキャンペーンだと思います。
とは言え、ビジネス的な側面から見ると、買い替えを促すこともできる中で、このようなキャンペーンをすることに戸惑いはなかったのでしょうか?


よく修理をして一つの商品を長く履いてもらうと新しい商品が売れなくなってしまう可能性に対して不安はないか聞かれるのですが、長く履ける靴作りというのは会社設立当初からの一つのテーマなので、変わらず長く履ける靴作りに向き合ってきています。
サステナブルという概念ができる前から、修理が出来る前提で製造しているので、本質的なサステナブルなんじゃないかと思います。修理することで命が吹き返した商品を見たお客様が、長く使うことの大切さを感じてもらえることって、その人の人生や価値観に良い気づきを与えられているんじゃないかと考えています。



その結果、地球全体がサステナブルに繋がっていくんじゃないかという気がします。
私は、家具や食器なども、古いものが好きなんです。それは、サステナブルだからという理由ではなく、長く大切に扱われてきたモノ特有の魅力があるからだと思うんです。大切に手入れがされてきたモノは時代を超えても、自分の生活にスッと馴染んでくれるようなあたたかみを感じるんです。



「OUT OF FASHION」のキャンペーンでも今回の「WILL YOUR WINGS」のキャンペーンでも、師匠と弟子のような、“想い”だけでなく、実際に“技術”を継承するシーンを拝見しました。RED WINGは時代に左右されずに同じ商品を作り続けているということは、まさにひとつひとつのブーツが「WILL YOUR WINGS」を体現している気がしています。実際にアメリカの工場などに足を運んで、現地のクラフトマンたちから感じる「WILL YOUR WINGS」はどのようなものでしょうか?

実際に製品を作っている人たちは全員、自分たちが世界一の品質の靴を製造しているという自負やプライドを持っています。アメリカにおいては国のインフラを支える人が履くワークブーツとしての側面が強いので、そのことからアメリカの働く人々の足元を支えている靴を製造していることに対して誇りを持っているんです。
そもそもRED WINGの工場はミネソタにあるレッドウィングシティという街にあるのですが、そこでは代々暮らす人達がいて、祖父母や両親含め、家族全員がRED WINGで働いている、働いてきたという人が多いんです。そういった意味では、大きな家族経営みたいな感じですよね。RED WINGというブランドは、昔から変わらないデザインのアイテムを作り続けているのですが、家族代々RED WINGに勤めることで、技術を継承することで、変わらずそういった方々が作り続けているんです。
また、レッドウィングシティという街自体にRED WINGは貢献しており、学校やコンサートホールやホテルやジムなど、様々なそこで暮らす人々が豊かになる様に、お金を使っていたりします。だからこそその街で暮らす人達は一様にRED WINGという会社に対して良いイメージを持っていて、会社で働きたいと思っている人が多いんです。言い過ぎかもしれないですが、街全体がひとつの家族の様な形で、RED WINGに関わる全員がWILL YOUR WINGSを体現していると思っています。
RED WINGを創業したチャールズ・ベックマンが最初に会社を立ち上げた時の本社ビルも工場も建て替えることなく、なんども修繕を繰り返しながら使っているんです。



「OUT OF FASHION」に代表されるように、RED WINGはトレンドの外側でビジネスをしていることが、時代に左右されない普遍的な支持を得て、結果商品を長く愛用してもらうことにつながっています。これは表層的なサステナブルではなく、本質を捉えたサステナブルなシステムだと感じました。

サステナブルって日本語に訳すと「持続可能」っていう意味ですよね。
人間が潜在的に欲しいものや求めていることって、持続可能になり得ないものが多い気がするんです。ただ本質的に人間が必要とするものは、時代や年齢問わず、ずっと変わっていないんじゃないかと考えています。RED WINGの靴はそういった本質的な商品だと考えていて、先程お話したアメリカの工場で行われているもの作りの部分もそうですが、人の本質に近い部分にこだわり作り上げられたもので。そのためデザインがタイムレスで、廃れないだったり、履いていて安心するといった人に寄り添った靴なんじゃないかと考えているんです。
だからこそRED WINGを売るということ以上に、本質的に大事なことをRED WINGを通して伝えていくことで、様々な人にとってのサステナブルの気づきになれば良いなと思っています。



最後に、由生さんからこの記事を読んでくださっているみなさまに、受け継ぎたい“想い”を教えてください。

一番言いたいことは、自分らしいスタイルを信じてほしいということです。
「RED WINGらしいファッションスタイルをしなきゃいけない」だったり、「RED WINGに自分を寄せていかないといけない」など、イメージが固まってしまっている人も多くいらっしゃると思うのですが、そうではないということを伝えたいです。RED WINGは、その人のファッションスタイルやライフスタイルに寄り添い、自分らしさを引き立て、可能性を広げてくれる靴だと思うんです。
私自身がRED WINGに出会い、ブーツを履いていくなかで以前よりも自分らしく生きていけるようになっています。



私は植物が好きなのですが、RED WINGって植物と似ていると思う部分が多いんです。
植物って自分に正直に生きていると思っていて、例えば太陽が好きな植物であればその方向に花を咲かせたり、太陽が嫌いであれば別の方向に花を咲かせたり…別に誰かを喜ばせるために、芽吹いたり、花を咲かせたりしないですよね。植物はただ正直なだけなのに、私達人間は植物をみて、幸せな気持ちになったり、心が温かくなったりしますよね。
RED WINGも同じで、ありのままの自分を支えてくれるブーツです。自分らしくいること、そしてそんな姿を見て幸せになったり、嬉しい気持ちになったりする人がたくさんいるということを、これからも様々な形でお伝えしていきたいなと思っています。

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